米 国 の 高 等 教 育 制 度

      ~ 日本の専門学校・短期大学・大学・大学院に相当する米国の教育制度に関する解説  

 
 米国の高等教育制度について                       
2007年3月14日

(1) 米国建国の歴史と時代背景

英国国教会の改革を唱えたキリスト教プロテスタントの一派であるピューリタン(清教徒)たちは、国教会から 加えられる弾圧を逃れ、1620年、メイフラワー号に乗って北米大陸に集団移住した。西欧からすれば単な る未開の地にすぎなかった米国の歴史が、ここから始まる。1636年、現在のハーバード大学の前身にあた る牧師養成学校のハーバード・カレッジが、マサチューセッツ州ボストン市郊外に創立されたが、このよ うなプロテスタンティズムの精神を持った人々こそが、1642年からの英国での「清教徒・名誉革命」、1775年 からの米国での「独立戦争」、1789年の「フランス革命」など、いわゆる「市民革命」の担い手であった 。「プロテスタント」(抗議者)とは、ドイツ人のマルティン・ルター (1483-1546年) が、1517年、カトリッ ク教会の扉に「95箇条の提題」を掲げたことに始まる宗教改革運動及び、その信仰のことである。カトリック教会が宗教や教育を独占 し、政治にまで介入することに抗議し、信仰の自由などの精神的自由の実現を求めた政治運動でもある。 また、一連の「市民革命」は、商業資本の成長に伴って台頭してきた新興貴族・商業資本家・富農らの「自由 に商業取引できる社会を作りたい」という経済的な求めに応じた社会変革運動でもあった。この歴史潮流 の萌芽は、既に1400年 代前半より始まった「大航海時代」に見出すことができる。この時代のポルトガル とスペインは、大西洋航路とインド航路を開拓して、はるばると、アフリカ・インド・東南アジア・南北アメ リカ大陸にまで進出し、そこから採れる金・銀・砂糖・穀物などを西欧諸国へ輸出する国際貿易を盛んにおこない、次々と植民地を広げていった。英国では、1600年に貿易商人の組合である「東インド会社」が設立され、オランダでも、1602年に世界初の株式会社と言われる別の「東インド会社」が設立されている。[こ の当時の日本は、戦国時代末期にあり、1543年、種子島に漂流したポルトガル人が鉄砲を持ち込んで以来、 1549年にスペイン人の宣教師フランシスコ・ザビエル(1506-1552年)が渡来するなど、これらの国と日本との 「南蛮貿易」が盛んになり、1600年に「東インド会社」の貿易船の乗員であるイギリス人のウィリアム・アダムズ、オランダ人のヤンヨーステン・ファン・ローデンスタイン、メルキオール・ファン・サントフォールトらが「関が原の 戦い」の半年前に大分県に漂着した後、徳川家康(1542-1616年)に仕えるという社会状況にあった。]  このようにして経済的な富を蓄積していった西欧の商業資本家と、宗教改革を進めるプロテスタントらの新興勢力が、官僚・常備軍・カトリック教会によって支えられてきた中央集権的な絶対王政を、一連の「市民革命 」によって打倒することで、「近代民主主義社会」が到来したのである。一連の「市民革命」の潮流に乗って、英国の植民地支配から独立した米国は、多様な宗教・人種・民族から成る「移民国家」として、また独立した各州から成る「連合国家」として、国際経済・科学技術・国際政治・外交軍事等の各分野を先導してきた。2007年時点で、建国231年になる。


(2) 米国の憲法と法律

1776年に公布された「独立宣言」をもって、英国の植民地支配から独立した米国は、1787年に制定された「合衆国憲法」(修正10条-1791年-)において、「この憲法によって合衆国に委ねられておらず、また、それによって州に禁じられていない権限は、それぞれの州または人民に留保されている」とある。従って、憲法の中において連邦政府の機能として定められていない権限は各州に留保されている。教育に関する権限は、憲法に特に定めがないため、各州に留保されているが、憲法の中に教育に関する権限が規定されていない理由は、「独立宣言」に至る歴史経緯から「教育は、政府や法律によって規制されてはならない」というワスプ (White Anglo Saxon Plotestantism) のコモン・ロー (伝統・慣習・判例を重視した、成文化されない英米法) が、米国社会の一般的な価値観になっているためである。また、マラノとかメシアニックと呼ばれるユダヤ人が、ワスプと共に米国社会の規範と価値観を形成する上で指導的な役割を果たしてきたことを忘れるべきではないだろう。さて、日本における最高規範は日本国憲法であるが、米国における最高規範はコモン・ローであり、その次が合衆国憲法になる。このことを理解するために、成文法たる合衆国憲法を例に挙げながらみていきたい。まず、米国の司法制度の特徴である陪審裁判からである。陪審裁判とは、有罪・無罪の判断に裁判官が加わらず、無作為に抽出された一般人から成る陪審員のみが、原則として全員一致をもって評決を下す裁判制度である。陪審裁判を受ける権利は、民事裁判のみならず刑事裁判にもおよび、一旦、陪審員が評決したならば、その評決を覆したり変更することはできない。「合衆国憲法」(修正7条-1791年-)には、「コモン・ロー上の訴訟において、訴額が20ドルを超えるときは、陪審による裁判を受ける権利が保障されなければならない。陪審によって評決された事実は、コモン・ローの規則によるほか、合衆国のいずれの裁判所においても再審理されることはない」と規定されている。 この修正7条では、陪審裁判を受ける権利が保障されており、コモン・ロー上の訴訟は裁判所よりもコモン・ローの規則に従って決着されるべきことが規定されている。ところで、日本の裁判員制度は、国民の中から無作為に抽出された裁判員と、従来の裁判官が多数決によって重大な刑事事件のみに判決を下す、新しい裁判制度である。「従来の日本の裁判制度のように、重大な刑事裁判の判決を裁判官だけに任せない」という司法改革の方向性は、米国の陪審裁判に一歩だけ近づいた民主的な司法改革であると高く評価できる。次に司法権の観点からコモン・ローをみると、「合衆国憲法」(修正11条-1795年-)には、「合衆国の司法権は、合衆国の1つの州に対し、他州の市民または外国の市民ないし臣民から提起され、訴追されたコモン・ロー及び衡平法上のいかなる訴訟にも及ぶものと解釈されてはならない」と規定されている。衡平法とは、コモン・ローの矛盾や欠陥を裁判官の道徳律に従って補正した不成文法である。英米法における、コモン・ローと対をなす法概念である。この修正11条では、合衆国の司法権は、コモン・ローと平衡法という英米法に特徴的な不成文法と密接な関係を持っている各州の司法問題には及ばないことが規定されている。このような米国の司法権の性質を別の角度から見た場合、米国社会の規範に従って、ビジネス等で成功をおさめるためには、憲法などの成文法を熟知しているだけでは不十分であり、コモン・ローなどの英米の歴史伝統や文化慣習に立脚した不成文法にも精通していなければならないことがわかる。例えば、日系一世の弁護士では、このコモン・ローを理解しておらず、米国人からの微妙な言い回しを正しく判断できない場合があり、また、問題解決のための人脈ネットワークが無いという点で、ワスプ・ユダヤの弁護士と比較して、クライアントたる本学の望む結果を出せなかったことがあった。さて、米国社会の価値観を説明する最後になるが、日本人には最も理解し難い、米国ならではの「銃器所持の権利」という観点から米国社会の規範と価値観をみてみる。「合衆国憲法」(修正2条-1791年-)には、「規律ある民兵は、自由国家の安全にとって必要であり、人民が武器を保有し、かつ武装する権利は、これを侵害してはならない」という規定がある。そして、具体的な銃器の管理規則は、各州ごとに異なって定められている。米国社会全体では1億9200万丁とも推察される個人所有銃器があり、国民の約7割が銃器を所有している。米国人は、「自由や安全などの個人の権利は、個人自らが守らなければならない。その努力をしない者は必然的にそれを失う」という価値観を持っており、自宅の寝室や車内に銃器を常備した日常生活を送っている。独立戦争から西部開拓の時代を経て、自存自衛の意識の高まりとともに、銃器の所持は、個人の権利として確立されてきた。凶悪な事件が起きるたびに「銃器の所持を規制すべきである」という世論が高まるが、日本人のように北朝鮮のスパイによって拉致されたり、送電線などを破壊されたりといった間接侵略を受けても、何ら反撃ができない無防備な国民と比較した場合、日米どちらの社会が治安と国防に役立っている社会なのかは、今後とも議論の余地がある。結論として、かかるコモン・ローこそが、米国の高等教育の自由(「政府や法律は、教育に介入してはならない」という文化的価値観)の基盤であることを、教育関係者は深く認識しておかねばならない。


(3) 米国の連邦政府 教育省

1980 年4月に連邦政府 教育省は設立された。教 育省は存在しているが、資金その他の面で高等教育の支援をしているだけであり、高等教育の監督官庁としての機能は果たしていない。この点で、日本の文 部科学省が教育に関する監督官庁として、学校教育法等の法律に基づいて一元的に監督している教育環境とは、まったく異なっている。このように、米国においては、大学等の高等教育機関を設立・統治・規制する権限と責任は、各州にある。しかし、各州も「教育は、政府や法律によって規制されてはならない」を遵守しており、各州は、高等教育機関の設置を認可するが、高等教育機関の認定をしたり、高等教育の質を保証することはない。このため、高等教育機関の認定制度は、民間の非営利組織の認定団体が自主的に運営している。ただし、2~3の州ではコモン・ローに反して規制を強化する試みがあるが空転状態である。例えば、オレゴン州には、Office of Degree Authorization (O.D.A.)つまり学位権威局という部署があり、そのサイトで米国の大学に関する情報を発信しているが、O.D.A.の情報の信頼性は全くない。なぜなら、O.D.A.の発信情報は、個人のブログと同様に、情報の正確性を維持する法的基準がなく、いくら主観的な情報発信であろうが、まったく自由だからである。従って、情報が事実である証明がないし、証明する法的根拠もない。 以上の事実に関して、本学は、O.D.A.に質問をした。「O.D.A.は、どのような手段によって、発信している情報の正確性を保つようにしていますか?」、「誰がO.D.A.の責任者でしょうか?」、「O.D.A.による情報の収集方法と分析方法は、少なくとも本学に関する限り出鱈目である。これでは個人が好き勝手なことを発信しているブログと同じではありませんか?」という質問であるが、O.D.A.は、これすらも回答できない状況にある。法的責任の追及を恐れて、逃げ回っているのである。この有様では、無責任を通り越して違法であるため、「現在のO.D.A.の管理体制を見直して改善して下さい」という要望を出した次第である。しかし、このような、おかしな州当局者がいたとしても、それも玉石混交の移民国家の米国らしいところであろう。本学は、逃げ回っているO.D.A.を追及する意欲を失った。なお、カリフォルニア州では、1990年代後半、州当局が大学の認定事業を実施しようとしたが、「コモン・ローと合衆国憲法に違反している」という連邦政府・教育省からの命令指示によって、その試みは挫折している。米国の歴史伝統とコモン・ローを理解していない、スペイン語を母語とする中南米系のヒスパニック、ヨーロッパのラテン系、東南アジア系などの移民が増えている州においては、時々、このような動きがみられるが、米国のコモン・ローは今後とも変わることはない。

 

(4) 米国の高等教育機関に関する認定制度

認定団体数は、全米に400団体以上ある。最も有名な、認定団体の連合組織の一つに、高等教育認定評議会(CHEA)がある。このCHEAが認定している認定団体数は60団体以上ある。また、CHEAは、大学の認定事業もしており、認定している大学数は3000校 以上ある。また、一度認定を受けても、数年ごとに認定更新の手続きと調査が行われ、更新をしない場合や認定の基準を満たしていない場合には、非認定団体・非認定大学となる。この認定制度は、あくまでも任意団体による認定であり、法律的な定めではないため、認定を受けていない大学や、認定を必要としない大学もある。そして、非認定大学であっても、州法に従って合法的に運営されている限り、教育評価をおこない、学位を授与することができる。さて、俗に言うディグリーミル(学位工場)とは、(1)大学名・氏名・学位を捏造・偽造してある学位記を発行すること。(2) 例えば、医療とは無関係な人物に医学博士号を授与すること。(3)無審査・無評価で学位記を発行すること。(4)年間数万人規模の不特定多数に学位記を乱発すること。(5)法律に違反している学位記を発行すること。以上であって、米国では、法律上のディグリーミルの定義すらない。米国のコモン・ローを理解していない日本の一部の教育者が、「非認定大学はディ グリーミルである」といった誤情報を流したり、虚偽宣伝をしているため、注意が必要である。 米国の国務省や教育省のサイトを読めばわかることであるが、認定・ 非認定を絶対視しておらず、コモン・ローの「教育は、政府や法律によって規制されてはならない」という建国以来の価値観を尊重していることがわかる。

 

(5)グローバルスタンダードとしての米国の高等教育機関

米国の「独立宣言」にみる建国精神は、政府や法律や誰かの認定に頼るのではなく、自ら学び、自らの目標を勝ち取ろうとする意志と自立性を尊重するものであ り、それが今日までの「アメリカン・ドリーム」(チャンスをつかめる国)と「フロンティア・スピリッツ」(開拓者精神を重視する国)という言葉で表現される米国の繁栄をもたらした教育基盤になっている。従って、日本人は、外国人に対して「日本人のことをどう思いますか?」 という質問をよくするが、他人の顔色を伺うことよりも自立的な判断力を重視する米国人ならば絶対に口にしない質問である。また、グローバル化した国際競争時代においては、政府権力を頼り、法律の未整備を嘆き、誰かの認定を得てから何かをしようとすること、即ち、政府や法律や誰かの認定に従属しようとすることは、既に自分の存在意義とチャンスを見失っている人・羅針盤を失った船舶に乗っている漂流者・新しい未知の世界へ踏み出す勇気のない臆病者である、 という悪い証明になる。今後の日本人は、米国人の開拓者精神や自立性尊重などの見習うべき価値観を取り入れ、政府権力や法律や誰かの 認定に頼ることなく、自ら学び、「自分がどういう人物であり、何をしたいのか」を強くアピールし、グローバル化した国際社会に適応できる、自立した社会人に ならなくてはならない。 米国は、多様な人種・民族・宗教の混在する「移民国家」であり、独立した各州から成る「連合国家」であるが、その根底に流れているコモン・ローは、プロテスタンティズムの精神である。米国の高等教育機関が人々に教えてきた、プロテスタンティズムを土台とする自由と独立とチャンスの追求こそが、世界各国の若者たちの心を魅了してきた。そして、米国の高等教育機関の歩んできた自由と独立の精神を尊重する歴史こそが、多様な人種・民族・宗教から成る世界各国の高等教育機関のグローバルスタンダードたりうる理由である。

 

(6) 米国の私立大学と公立大学

米国の大学を私立大学と公立大学(州立大学)に分けて、それらの法的地位を概観すると、次のようになる。

A. 米国の私立大学の法的地位

米国の私立大学の法人格には、非営利教育法人のほか、宗教法人・財団法人・株式会社がある。ハーバード大学は、米国最古の私立大学であり、英国の植民地時代である1636年に現在のマサチューセッツ州に創立された。最大の出資者である牧師のジョン・ハーバードの名前を冠した名門大学であり、その法人格は非営利教育法人である。独立宣言に至る歴史経緯から、「教育は、政府や法律によって規制されてはならない」というコモン・ローを直接的に受け継いだハーバード大学を筆頭として、高等教育への政府の干渉を排除し、大学の自治独立と学問の自由を確立した多種多様な私立大学が今日まで米国内で発展してきた。1999年にハワイ州に設立されたIOND Universityも、米国の自由と独立の精神を尊重する高等教育機関の一つであり、米国にみられる多くの大学のように非営利の教育法人である。また、連邦政府及びハワイ州政府国税庁から永久免税特権が付与されている。IOND Universityの特徴は、米国のノントラディショナル・エデュケーション(旧権威を刷新する非伝統的教育)の流れを新しく発展させた、国際的なシンクタンク型の大学にある。旧権威にとらわれない教育評価と、革新的な発想に基づいた産学協同事業を推進することによって、人々の多様なニーズを満たしつつ、社会貢献と社会改革を実践している。特に、「新しい民主主義を創造する」ことを、2010年7月4日の本学総会において議決して以来、本学は、公共政策のシンクタンク機能に重点を置き、政策提言等の政治活動を展開している。


B. 米国の州立大学の法的地位

(A) 州政府機関 (Agencies) としての州立大学は、法人格がなく、州政府直属の
  教育機関として機能している。 

(B) 公法人 (Public corporation) としての州立大学は、州法により法人格が付与
  されており、州議会に従属している。

(C) 州憲法上、独立した法人 (Constitutionally independent corporation) としての
  州立大学は、州法により司法・立法・行政の三権からの干渉を排除しうる
  法人として、独立した地位を保証されている。

米国の公立大学と言えば州立大学になり、国立大学はない。この州立大学の法的地位には上記の3 類があるが、この3種類は、州立大学の統治機関である理事会の法的地位に過ぎない。理事会は、学外者から成り、州知事・州議会によって任命された者や、州政府の職員から構成されている。学長以下の教授会(Faculty)は、被雇用者であり、理事会に従属している。この運営管理方式は、元来、植民地時代の私立大学で発展したものであり、州立大学においても、この運営管理方式が採用されて今日に至っている。一般的に州立大学の財源(歳入)の35%~70%は州政府と連邦政府からの支援金である。金額にすると400億円~800億円になる。州政府からの支援金が少ない州立大学に対しては、連邦政府が、その分を補うようになっている。また、5%~15%は私的団体からの寄付金であり、授業料と事業収益を合わせても25%~30%にしかならない。このような州立大学は、納税者たる有権者によって支えられているため、州政府や州議会を通して表明される納税者(有権者)の要求に応じた役割を果たさざるを得ない。そのため、公共の福祉としての高等教育を担っている。一方、私立大学は、まったく政府の制約を受けないでいる。米国最古の私立ハーバード大学の財源を見てみると、1974年に設立された非営利投資法人Harvard Management Companyが寄付金等を原資とする3兆円を資金運用し、2007年時点では年率21%の運用利益を出している。この運用利益だけで、学生たちから授業料を徴収せずとも十分すぎる歳入状況となっている。

 

(7) 米国のエリート教育について

米国のエリート教育は、義務教育の段階から始まる。さらに詳しく言うなら、米国の建国に功労のあった、一定の財閥の血族として生まれない限り、米国の真のエリート(支配階層)たりえない現状がある。米国の真のエリートたるには、一般の中学校Public Schoolとは完全に隔絶した、中高一貫教育をおこなう全寮制を原則とする米国東部海岸地方に点在している名門私立の中学・高校Boarding School / Preparatory Schoolに 入学しなければならない。この時点で、その血族や出身家の資産状況などがチェックされるため、名家の子弟でない限り、普通の資産家とみなされている米国人の子弟ですら入学できない仕組みになっている。 この6年間でおこなわれる中等教育は、単なる知識・技能の授受ではなく、米国の将来を担うことになる管理指導者にふさわしい、高度な思想とマナーと団結心を涵養することに重点が置かれている。このような私立の中学・高校Boarding Schoolを卒業した生徒は、決まって、米国の東北部にあるアイビーリーグと呼ばれる8つの名門私立大学に進学する。すなわち、Harvard, Yale, Pennsylvania, Princeton, Columbia,Brown, Dartmouth, Cornelの各大学である。 アイビーリーグとは、アメリカン・フットボールの大学競技連盟のことであるが、「INTER-VARSITY」(レギュラー仲間)という言葉の簡略形「I-V-Y」が、1930年代に「IVY」(つた)として誤って新聞報道されて以来、8つの名門私立大学の総称になったとされる。米国のエリート層を指して、「東部エスタブリッシュメント」と表現する由来は、ここにある。 アイビーリーグに進学した後も、Boarding Schoolで培った人脈との交流は続き、こうして、各大学の各専攻を修了した暁には、(A) 大企業幹部  (B) 政府中枢部  (C) 大学  (D) 軍情報機関へと就職していき、そこで米国の管理指導者としての本当の力量が試されることになる。米国は、猟官制度の国であり、政権交代に応じて政府中枢部も入れ替わり、また(A)~(D)の相互を自由に転職・転属できる仕組みが確立されているため、Boarding Schoolで培った、親しい顔見知りだけで固められている「見えざるエリート層」が、米国の全てを管理指導することになる。こ の「見えざるエリート層」は、最終的には一定の血族によって束ねられているため、例え政権交代が起きようとも、その戦略や思想には長期的な一貫性がある。この「見えざるエリート層」に登用され、命令指示を受けている「上級ワーカー」は、もはや支配階層になることはできない。また、さらに大多数の米国民は、「一般ワーカー」として、その一生を終えていくことになる。従って、州立大学は、「一般ワーカー」レベル以下の庶民と米国永住権の取得を希望する外国人のための、公共の福祉を目的とした大学として機能している。州立のカリフォルニア大学UCLAなどへ、日本から留学したとしても、「一般ワーカー」レベルの留学体験をするにとどまり、結果的に見ると、語学力が身についたり、CPA等の専門資格の取得ができるにすぎない。このような米国社会の現実を踏まえている識者のみが、米国型民主主義とアメ リカン・ドリームの現状などについて、冷徹に正しく語ることができる。さて、カーネギー財団による2005年版「The Carnegie Classification of Institutions of Higher Education」を参照しても、専門学校・短大・新設大学などが大学数に含まれておらず、米国全体で、一体どれだけの大学数があるのかは把握できないが、概算を出すことはできる。つまり、米国50州の各州ごとに 100校の大学があると仮定しても、米国全体では、少なくとも5000校以上の大学が存在している計算になる。そして、米国を動かすエリート養成教育という観点からすれば、「アイビーリーグ以外の米国の大学は、どれも同じである」と言っても過言ではない。

 

(8) 米国で生まれた高等教育機関としてのIOND University 日本で果たすべき役割

以上のごとく、日本とは全く異なる高等教育制度と価値観の下で運営されている米国の大学は、1776年の「独立宣言」の精神を現在まで継承している自治組織であり、高い独立性と自由を享受している。 そして、IOND Universityも、政府や法律や誰かの認定に依存することなく、自ら学び、自らの目標を達成しようとする自立した社会人の養成と支援と評価に取り組んでいる高等教育機関である。米国ハワイ州にある非営利教育法人IOND Universityと、国際間の業務提携契約を締結している日本校は、日本の文部科学省の所管する大学ではないため、社団等の法人格で運営されている。現在のIOND Universityの教員数は312名であり、日本を含む世界各国の社会人(学生)は毎月ごとに入学と卒業をしており、単科履修や人物顕彰者等を含めた、その総数は1000名以上におよんでいる。日本や海外の大学院に進学された方、民間企業に就職・転職された方、大学等の教育機関での教育や研究に従事された方など、その活躍の分野は非常に多岐にわたっている。ヒト・モノ・カネ・情報の流れがグローバル化していく国際社会は、各国の制度と制度、法律と法律、価値観と価値観が激突する社会であるが、IOND Universityを含む世界各国の多様な高等教育機関の学位や称号の通用性や価値は、各大学や各企業が決めていることであり、法律や政府や誰かの認定によって決められていることではない。また、決めようとすることは不可能なことである。これは、従来からそうであったが、ますます、その傾向が明白になりつつある。目的意識や使命感を持って学んでいる個人こそが、その価値を決めることになる。人間の精神的活動と、その価値は、法律や政府によって制限されることはありえず、制限しようとすることは不可能なことである。そして、グローバル化していく日本社会の中における、IOND Universityの果たすべき役割は、米国のように多種多様な高等教機関が存在できる、多元的な価値観が共存共栄できる自由な社会を構築することである。さらには、単なる軍事同盟を指している「日米安保体制」とは異なる意味を持つ、教育・文化・経済面も含めた幅広い緊密な日米関係を指す「日米同盟」を強固にしていくことである。過去の日米関係を概観した場合、東洋文明の頂点 に立つ日本と、西洋文明の頂点に立つ米国が、第二次世界大戦(大東亜戦争)と呼ばれる世界史上、最大の戦争において激突した歴史を忘れることはできない。それは、人類史上、最も大規模で最も悲惨な戦争であった。その評価は、歴史家に任せることにするが、その終戦後62年目となる2007年現在の日米両国は、お互いの歴史や文化や科学技術力などを詳しく理解し合っていることは疑いようがない事実である。そして、人類全体の未来を開拓していく上で、あらゆる分野における「日米同盟」が有効に作用することも確かである。過去の恩讐を超え、未来の希望を託せる建設的な「日米同盟」を築いていくことが必要だ。このように考える IOND University は、学問を通じて、日本国民がグローバル化する国際社会に適応しつつ、精神的な自由を達成できるよう、より自由で豊かで安全な日本社会の実現を目指している。本学における学問とは、理論的に体系化された知識と方法論を指す。学問の目的は、真理を明らかにすることであり、そのあり方は、選抜された社会的エリートによって独占的に管理されてはならず、大衆救済に私心なく役立てねばならない。ちなみに、人間が真理を認識する方式、即ち、真理が成立する方式には3つある。(1)真理を認識する知性としての観念と実在とが一致したとき-一致理論-、(2)観念が観念体系の中において論理的に一貫した整合性をもつとき-整合理論-、(3)仮説が事実によって検証されたとき-プラグマティズム-である。本学は、学問を極め、真理をつかみ、人々の救済に私心なく役立つ人物が、本学から一人でも多く出ることを希望している。
                                                 以上

 

  

< 参考サイト >

駐日米国大使館・国務省「米国の大学教育について」(日本語サイト)
   View on US Higher Education.files\wwwf-ejournal-j-edu2005a.pdf

任意団体・日米教育委員会「米国留学の基礎知識」 (日本語サイト)
   http://www.fulbright.jp/study/res/t1-college04.html

連邦政府・教育省  「公式サイト」(英語サイト) 日本の文部科学省と違い、教育には介入しない。
   http://www.ed.gov/index.jhtml?src=a

連邦政府・国務省  「公式サイト」(英語サイト) 日本の外務省に相当する政府機関である。
   http://www.state.gov/

連邦政府・国防総省「公式サイト」(英語サイト) 日本の防衛省とは密接な協力関係にある。
   http://www.defenselin.mil/




   ( 「米国の高等教育制度」 評議運営委員会 再議決 2010年12月9日付 )